
引っ越し後は、荷解きや手続きが立て込んで大変ですよね。
「役所に転入届けを出して、銀行も手続きして、あとは薬剤師の免許も書き換えて、あとは、あれとこれと。」
と思っているそこのあなた!お待ちください。
引っ越し後には薬剤師免許の変更が必要な場合と、そうでない場合があります。
詳しく解説していきますので、ご自身は変更が必要なのか確認してみてください。
引っ越し後に薬剤師免許の変更は必要なのか?

薬剤師免許証は、厚生労働省が管理している薬剤師名簿に登録された上で発行されます。
その薬剤師名簿の記載事項に変更が生じた場合は、なるべく早めに変更手続きをしたいですよね。
しかし、あなたは今、変更手続きが必要な状況なのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
住所が変わっただけなら、変更手続きは必要ない!
薬剤師法施行令では以下のように定められています。
薬剤師法施行令
(薬剤師名簿の登録事項)
第四条 薬剤師名簿には、次に掲げる事項を登録する。
二 本籍地都道府県名(日本の国籍を有しない者については、その国籍)、氏名、生年月日及び性別
(薬剤師名簿の訂正)
第五条 薬剤師は、前条第二号の登録事項に変更を生じたときは、三十日以内に、薬剤師名簿の訂正を申請しなければならない。
つまり、住所のみを変更した場合は薬剤師名簿の変更手続きは必要ありません。
あくまで「本籍地の都道府県が変わった場合」に手続きが必要になります。
本籍地と住所の違い
本籍地と住所は下記のような違いがあります。

本籍は「戸籍の今の所在地」を指します。
戸籍とは氏名や生年月日、配偶者や親子の情報などの個人情報を夫婦単位で記載した公文書です。
”夫婦単位”ですので、結婚前は両親の元の戸籍に所属しますが、結婚後は夫と共に新たな戸籍を作る必要があります。
結婚の時に本籍地が変わるのは、そのような理由があるのです。
薬剤師名簿の変更が必要なパターンと不要なパターン
今回の引っ越しが、実家に本籍をおいたままの引っ越しであれば、それは住所のみの変更になるので、薬剤師名簿の変更は不要です。
もし今後、結婚して名字が変われば、氏名の変更が生じますので手続きは必要です。
そして、結婚する場合は夫婦で本籍地を同じにしなくてはいけません。
どちらかの実家に合わせるか、新居を建てた場所になるパターンが多いでしょう。
その場合、本籍地が変更され県外になりましたら、氏名の変更と共に、薬剤師名簿の変更手続きが必要になります。
本籍地の観点から変更手続きが必要か考えるには
氏名が変わっていない状態で、薬剤師名簿の変更が必要かどうか判断するには、以下のことを考えてください。
- 役所で本籍地が変わるような届け出をした(転籍届、婚姻届、離婚届を出した)
- 上記の届け出をし、本籍地の都道府県が変わった
上記のふたつに当てはまるなら、本籍地の変更になりますので薬剤師名簿の変更が必要です。
役所に転出届、転入届しか出していない場合は、住所のみの変更となり、薬剤師名簿の変更は必要ないため注意しましょう。
薬剤師名簿と免許証の変更手続きをするには

ここまで、変更手続きが必要なタイミングについてお伝えしてきました。
今は必要ないとしても、実際手続きをするとなれば、書類集めなどで時間と手間がかかります。
特に、結婚と就活が重なる場合は要注意です。
手続きに必要な書類が集まるのに数日かかったり、就活で提出できる免許証が届くのに数ヵ月かかったりします。
ですので、手続きは計画的に行わなくてはなりません。
事前に何が必要になるのか、どのくらい時間がかかるかなどを確認し、心の準備をしておきましょう。
実際にどんな手続きを行うの?
実際に行われる手続きは以下の2点です。
- 薬剤師名簿の訂正
- 薬剤師免許証の書換
前の項目でもお伝えしましたが、薬剤師名簿の訂正については以下のように定められています。
薬剤師法施行令
(薬剤師名簿の訂正)
第五条 薬剤師は、前条第二号の登録事項に変更を生じたときは、三十日以内に、薬剤師名簿の訂正を申請しなければならない。
法律に記載されている通り、薬剤師名簿に登録されている内容で変更事項があった場合は30日以内に届け出る義務があります。
一方、薬剤師免許証の書換については以下のように定められています。
薬剤師法施行令
(免許証の書換交付)
第八条 薬剤師は、薬剤師免許証(以下「免許証」という。)の記載事項に変更を生じたときは、免許証の書換交付を申請することができる。
つまり、免許証の書換は義務ではありません。
しかし今後、新たな職場に就職するとなれば、免許証の提出を必ず求められるでしょう。
その際、免許証に記載されている内容が戸籍と異なる場合、薬局側が行う手続きで不都合が生じる可能性があります。
義務ではないにしても、薬剤師免許証は書き換えておいた方が、今後、困ることもないでしょう。
ちなみに、免許証を書き換えてしまうと、結婚前の旧姓がなくなってしまうのか心配されていませんか?
旧姓時代に薬剤師として論文を書いたなど、実績を残していると名前が変わってしまうのが残念ですよね。
しかし、そんな人のために、希望をすれば免許証に旧姓も併記してくれます。
以下の記事に詳細をのせていますので、ご覧ください。
知ってた?薬剤師免許に旧姓併記ができるように!メリット・デメリットは?
手続きの場所は?
手続きはその時に住んでいる都道府県の保健所で行えます。
免許証には本籍地の都道府県が記載されているので、本籍地の保健所でなくてはできないと思われがちです。
しかし、そこは住所の近くにある保健所で問題ありません。
以下のサイトに全国の届け出場所がまとめられていますので、ご覧ください。
手続きに必要なものは?
保健所で手続きをするには、保健所が開いている平日の時間内に行く必要があります。
ですので、薬剤師名簿の訂正、薬剤師免許証の書換の手続きは同時に行う方が効率的です。
今回は、2つの手続きを同時にするのに必要なものをまとめてみました。
1.薬剤師名簿訂正申請書、薬剤師免許証書換交付申請書
保健所でもらえます。
事前に記載しておきたい場合は以下の書式をご利用ください。
2.戸籍謄本or戸籍抄本
本籍地の確認のために使われます。
「戸籍抄本」や「戸籍謄本」は、本籍地の市区町村役場へ発行を依頼する必要があります。
自治体によっては、役場の特別出張所でも発行できる可能性がありますので、平日の時間内に、ご自身が取りに行きやすい場所を探してみてください。
時間内に取りに行けない場合は、代理人に行ってもらうか、郵送、コンビニでの発行が選べます。
発行方法や必要なものなどは、自治体により違いがあります。
本籍地の自治体が出しているホームページを参照の上、発行依頼をしましょう。
また、婚姻届を提出した直後は戸籍謄本を発行できない可能性が高いです。
一般的には、発行できるようになるまで1〜2週間かかります。
もし、発行できるか分からない場合は、役場へ問い合わせてみましょう。
3.薬剤師免許証(原本)
薬剤師免許証の書換をする場合は、ご自身が今、持っている免許証を返納する必要があります。
手続きの時に、保健所へ提出しましょう。
また提出すると、あなたの手元には、その免許証は戻ってきません。
免許証がなくなると、薬剤師登録番号が確認できなくなります。
必要になる場面は、かなり限られますが、念のためコピーをして手元においておくと安心でしょう。
4. 3,750円分の収入印紙
手続きの手数料として必要です。
薬剤師名簿の訂正に1,000円、薬剤師免許証の書換交付に2,750円、それぞれにかかります。
収入印紙は事前に郵便局での購入が必要です。
保健所では購入できませんので注意してください。
5.官製はがき1枚(登録済証明書を希望する場合のみ)
薬剤師名簿に変更内容が登録されると、提出した官製はがきの裏に登録済証明書の内容を記載した上で郵送してくれます。
登録済証明書は薬剤師免許証が届くまでの間、薬剤師資格の証明書として使えます。
就活する際には重要な書類となりますので、依頼することをオススメします。
登録済証明書の申請用はがきは保健所でも配布されていますが、数に限りがあり、なくなっている可能性もあります。
収入印紙と一緒に、官製はがきを郵便局で購入してしまうのが確実です。
通常は63円のはがきであれば問題ありませんが、速達を希望する場合は追加で260円分の切手を購入しておきましょう。
官製はがきは、表面に自分の住所と名前を記載、裏面は何も書かずに提出します。

また、収入印紙と同じく、官製はがきや切手も保健所では購入できませんので、くれぐれも郵便局での購入を忘れないようにしましょう。
6.遅延理由書(薬剤師名簿の訂正が30日以内にできなかった場合に必要)
薬剤師名簿の訂正は、登録事項の変更があってから30日以内に行うよう、法律で定められています。
しかし、保健所は平日の限られた時間しか開いておらず、忙しいなか手続きに出向くのも大変です。
もし薬剤師名簿の訂正が必要になってから30日を過ぎてしまったとしても、遅延理由書を記載すれば手続きができます。
遅延理由書は保健所にありますので、事情を説明し、用紙を貰うといいでしょう。
ここで、手続きに必要なものを以下にまとめます。
- 薬剤師名簿訂正申請書、薬剤師免許証書換交付申請書
- 戸籍謄本or戸籍抄本
- 薬剤師免許証(原本)
- 3,750円分の収入印紙 ←郵便局で購入
- 官製はがき1枚(登録済証明書を希望する場合のみ) ←郵便局で購入
- 遅延理由書(薬剤師名簿の訂正が30日以内にできなかった場合に必要)
自治体によっては、上記以外にも必要なものが指定されている場合があります。
ご自身が手続きをする保健所のホームページを確認の上で、手続きに行きましょう。
保健所へ手続きに行けない場合は?

ここまで手続き方法を見てきました。
しかし、忙しくて保健所に行けない場合はどうしたらいいのでしょうか。
保健所に郵送しての手続きはできませんが、代理で別の人に手続きしてもらう事は可能です。
免許の代理申請について
免許の申請は本人による申請が原則ですが、やむを得ない場合には代理人による申請を行うことができます。
代理申請が可能な手続
・名簿訂正・書換交付申請
代理人が申請する場合は、あなたが委任状を記載し、代理人に保健所へ持参してもらう必要があるでしょう。
一度、現住所の近くにある保健所に代理人による申請ができるかを聞き、可能であれば必要な書類等があるか確認してみてください。
書き換えられた薬剤師免許証が届くのはいつ?

薬剤師名簿の訂正、薬剤師免許証の書換には、ある程度の期間がかかります。
厚生労働省からは、以下のような案内が出ています。
各手続きの登録が完了するまで、窓口に申請されてから2ヶ月程度のお時間を要しております。免許証の発行が伴う場合は、免許証がお手元に届くまで更に1~2ヶ月程度お時間がかかりますので、予めご了承願います。
つまり、保健所で手続きをしてから登録までに2ヶ月、免許証の発行を伴うと3~4ヶ月かかります。
前の項目でもお伝えしましたが、「登録済証明書」は免許証が届くまでの間、薬剤師資格を持っている証明書として使えます。
手続き後に就活をする予定なら、貰っておいた方が良いです。
忘れずに依頼できるよう、頭の片隅においておきましょう。
他に引っ越し後にやるべきことは

ここまで、薬剤師名簿と薬剤師免許証の変更について見ていきました。
他に、薬剤師関連で行うべき手続きはあるのか、見ていきましょう。
認定薬剤師の住所変更

認定薬剤師など、資格を持っている場合は住所変更を忘れないようにしましょう。
それぞれ、持っている資格に応じた学会へ、住所変更の手続きが必要になるかと思います。
特に研修認定薬剤師は、更新時期が近づくと「更新手続きのお知らせ」を送付してくれるようです。
住所変更が行われていないと、手紙が受けとれず、資格消失にも繋がりかねません。
また今後、結婚し氏名が変更されたら、その時も変更手続きが必要でしょう。
薬剤師免許と認定薬剤師の登録されている名前が異なってしまうと、整合性がとれなくなってしまします。
細かいことですが、忘れずに行いましょう。
まとめ

以上、引っ越し後の住所変更、薬剤師名簿の訂正と免許証の書換についてまとめました。
実際に婚姻届を出すと、薬剤師免許の変更以外にも銀行の名義変更など、やることがたくさんあります。
忙しい中でもスムーズに手続きができるよう、計画をたてておきましょう!