薬剤師になるには

薬剤師と登録販売者の違いは何?7つの異なる点と適した人材とは?

医薬品を扱う仕事といえば、薬剤師と登録販売者が挙げられます。

ドラッグストアの求人でよく見かけるのが「登録販売者」の文字。

「登録販売者って聞いたことはあるけどどんな仕事をしているの?」と思う人もいるのではないでしょうか。

登録販売者は2009年にできた比較的新しい資格です。

具体的な仕事内容などは、一般的にあまり知られていません。

この記事を読むと「登録販売者はどんな資格?」「薬剤師との違いは?」「2つの資格に適性がある人」などが分かるようになります。

登録販売者とは?

登録販売者は、2009年の薬事法改正にともなって誕生した公的資格です。

資格保有者は、ドラッグストアや薬局などで一般医薬品(医師の処方せんがなくても買える薬)を販売できるんですよ。

それまでは、医薬品を販売できるのは薬剤師と薬種商という資格を持つ人に限定されていました。

登録販売者の資格が誕生した背景には国が進める「セルフメディケーション」影響があります。

セルフメディケーションとは、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な体の不調は自分で手当すること」と世界保健機関(WHO)は定義しています。

セルフメディケーションを実現するためには、消費者に一般医薬品を身近に感じてもらわなければいけません。

しかし、ドラッグストアや薬局などでは長年慢性的な薬剤師不足に悩まされていました。

この問題を解消するために、登録販売者の資格が新設されたのです。

薬剤師と登録販売者の違いを7つ

薬剤師と登録販売者はどちらも医薬品を販売することができます。

しかし、この2つの資格にはさまざまな違いがあります。

ここでは薬剤師と登録販売者の違いを7つ見ていきますね。

1.取り扱う薬の違い

薬剤師と登録販売者では、販売できる医薬品が異なります。

一般医薬品には、注意すべき度合いや副作用のリスクなどから第1~3類の3つに分類されているところ、

医師の処方せんをもとに処方する医薬品、ドラッグストアや薬局で売っている一般医薬品のすべてを薬剤師は取り扱えます。

一方で登録販売者は、第2類と第3類のみ販売できるんですよ。

第1類医薬品は、効き目は強いが副作用のリスクも大きいので、取り扱いには特に注意が必要。

消費者の手が届かない場所に陳列すると定められているいて、薬剤師だけが販売できます。

第2類医薬品も取り扱いには注意が必要で、かぜ薬や解熱剤、鎮痛剤などが該当。

第3類医薬品は第1類・第2類以外の一般医薬品のことで、ドリンク剤や整腸剤、消化剤などが該当。

ドラッグストアで取り扱っている一般医薬品のうち、約9割は第2類・第3類医薬品です。

薬剤師が不在時でも、登録販売者がいればほとんどの医薬品を販売することができるんです。

2.調剤業務の有無の違い

薬剤師と登録販売者は業務内容にも大きな違いがあります。

医師の処方せんを確認して、患者さんに必要な薬を作る調剤業務は薬剤師しかできません。

その際に処方内容が適切であるか「処方監査」を行って、疑問があれば医師に問い合わせます。

調剤過誤は患者さんの健康被害につながる恐れがあるので、正確性が求められます。

3.他職種と連携の有無の違い

薬剤師が他職種と仕事をする機会が多いのに対して、登録販売者は単独で現場対応を行います。

病院勤務の薬剤師は、医師や看護師など他の医療従事者と連携して、患者さんの病状に合った医療を提供します。

入院患者さんの治療に関わることも多いでしょう。

また在宅薬剤師は患者さんの自宅や入居先を訪問して、薬剤の提供や服薬指導、健康相談を行います。

介護施設では患者さんの状況を正確に把握するために、介護スタッフとの密なコミュニケーションが欠かせません。

4.職場の違い

薬剤師と登録販売者が同僚になるのは調剤薬局やドラッグストアで、それ以外は勤務先が異なります。

薬剤師のおもな職場は病院や調剤薬局、ドラッグストア、製薬会社、医薬品卸売会社などです。

中には公務員として、保健所や衛生研究所で働く人もいます。

一方、登録販売者のおもな職場はドラッグストアや調剤薬局です。

最近ではコンビニやスーパー、家電量販店、ホームセンターなども勤務先になっています。

2009年の改正薬事法施行により、コンビニやスーパーなどでも一般医薬品第2類と第3類の販売ができるようになりました。

ただし医薬品を販売する店舗は営業時間の半分以上、登録販売者を置かなければいけません。

コンビニやスーパーなどでは登録販売者の資格保有者を雇うだけでなく、従業員にも積極的に資格取得をすすめているんですよ。

5.資格取得方法の違い

薬剤師と登録販売者は資格取得方法にも大きな違いがあります。

薬剤師になるためには、厚生労働省が毎年実施する「薬剤師国家試験」に合格する必要があります。

一方、登録販売者になるためには、各都道府県が1年に1回実施する「登録販売者試験」に合格する必要があります。

薬剤師の国家試験受験資格は「6年制薬学課程を修めた人」に限定されるので、狭き門ですよね。

厚生労働省が発表した「薬剤師国家試験」の合格率は2019年度が70.91%、2020年度が69.58%、2021年度が68.66%です。

6年生新卒の「薬剤師国家試験」の合格率は2019年度が85.50%、2020年度が84.78%、2021年度が85.55%になります。

引用:厚生労働省| 薬剤師国家試験の受験者数、合格者数、合格率推移

登録販売者の受験資格は「年齢、学歴・経験不問」なので、チャレンジしやすい資格だといえるでしょう。

登録販売者試験の合格ラインは正答率7割以上です。

厚生労働省が発表した「登録販売者試験」の合格率は2018年度は41.3%、2019年度は43.4%、2020年度は41.5%になります。

挑戦しやすい資格ですが、合格するにはしっかりとした準備が必要ですね。

引用:厚生労働省│これまでの登録販売者試験実施状況等について

薬剤師は医薬品ならすべてを販売できるので重宝されますが、複数雇うとコストが膨らみます。

人件費を抑えるために、積極的に登録販売者を採用する企業も多いんですよ。

登録販売者の資格を持っていると、就職や転職に有利になる可能性があります。

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6.現場で単独対応できるまでにかかる期間の違い

薬剤師と登録販売者では、資格取得後に現場で1人で対応できるようになるまでの期間が違います。

薬剤師は資格を取得すれば、すぐに1人でお客さんに対応することが可能です。

一方で登録販売者は資格取得後も研修を終えるまでは、1人でお客さんの相談に乗ったり医薬品を販売したりすることはできません。

具体的には、直近5年の間に同一店舗で2年分(月に80時間)の実務経験を積まないと正規登録販売者として認定されないのです

直近5年以内であれば2年間は連続でなくても問題ありません。

研修中の登録販売者は、薬剤師や正規登録販売者のもとで仕事をします。

7.収入の違い

薬剤師と登録販売者は収入面でも大きな違いがあります。

資格取得の難易度が高い薬剤師の方が正社員、パートともに高収入です。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査の2020年度」のデータでは、薬剤師全体の平均年収は564.8万円。

大手求人サイトによると、薬剤師のパートの時給は1,800円~2,300円が相場。

ただし薬剤師の収入は、必ずしも都市部ほど高いわけではありません。

地方は慢性的に薬剤師不足の地域が多いので、正社員、パートともに収入は高くなる傾向です。

一方で登録販売者は大手求人サイトによると、

ドラッグストア勤務で正社員の場合、都市部は30歳で450万~500万円、地方は30歳で
400万~450万円です。

ドラッグストアでは、登録販売者の資格を持つ人を店長候補で採用するケースが多くなっています。

登録販売者のパート時給は、ドラッグストアや調剤薬局で1,100円~1,200円、コンビニで900円~1,000円が相場。

ほとんどの職場で、登録販売者手当が時給に30円~60円加算されます。

引用:厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査

薬剤師と登録販売者に向いているのはどんな人?

薬剤師と登録販売者の違いを紹介してきました。

それでは薬剤師と登録販売者に向いているのはどんな人でしょうか?

薬剤師に向いている人

次の5つのタイプは薬剤師に適性があります。

細かい作業が得意な人

薬剤師のおもな仕事は調剤業務です。

ミリ単位で調剤をすることも多く、わずかな誤差が患者の健康被害につながる可能性もあるので、慎重な作業が求められます。

手先が器用で細かい作業が得意な人は、薬剤師に向いているでしょう。

集中力がある人

薬剤師の仕事は、基本的に単調な作業のくり返し。

新人の頃は緊張感が持続します。

慣れてくると、気の緩みには気を付けなければいけません。

また、忙しくて疲れた時なども注意が必要です。

薬剤師は、長時間集中できる人が向いています。

責任感が強い人

薬剤師は医師の処方せんに従って調剤を行います。

薬剤師が提供するお薬を間違えると、患者さんの健康に悪影響が出ます。

場合によっては命に関わることもあるでしょう。

自分の仕事が患者さんの健康を左右すると自覚して、責任を持って仕事ができる人は薬剤師に向いています。

勉強熱心な人

医療の分野では、毎年のように新しい治療法や新薬が誕生します。

また、新たに発見された副作用もあります。

従来の知識のままで調剤や服薬指導を行うと、患者さんの健康に被害が出るケースも。

薬剤師は国家試験に合格してからも、スキルアップのために勉強し続けなくてはいけません。

自己研鑽を続ける意欲がある人は、薬剤師に向いているでしょう。

コミュニケーションスキルが高い人

薬剤師の職場は病院や調剤薬局、ドラッグストアなどですが、どこでも接客する機会が多いです。

薬剤師のおもな仕事の一つが服薬指導で、お薬の効能や副作用、服用方法を説明します。

服薬指導の際には専門用語など使わずに、できるだけ分かりやすく伝えると喜ばれるでしょう。

接客が上手な薬剤師には、患者さんも心を開いてくれやすいです。

コミュニケーションスキルが高い人は薬剤師に向いています。

登録販売者に向いている人

次の4つのタイプは登録販売者に適性があります。

健康に関心が強い人

登録販売者は、健康について相談を受けることが多い立場です。

日頃から健康に関心が深くて、積極的に情報収集を行う人は登録販売者に向いています。

勉強熱心な人

登録販売者はお客様が医薬品を購入する時に、適切な情報提供を行わなければいけません。

また、資格取得後も新薬が出るたびに知識をつける必要があります。

勉強し続ける向上心のある人が登録販売者に向いています。

商品の販売企画に興味がある人

登録販売者の職場として多いのがドラッグストアです。

資格取得後、2年間の研修を終えて正規登録販売者になると、商品の陳列や販売企画を任されることもあります。

売り場作りや商品の販売促進に興味がある人は、登録販売者に向いているでしょう。

人と話すのが好きな人

登録販売者はお客様の健康や医薬品購入の相談を受けて、アドバイスをするのが仕事です。

日頃、周りから困りごとを相談される人は適性がありますよ。

人と話すことが好きで、お客様の悩みに親身になって対応できる人は登録販売者向きだといえます。

薬剤師と登録販売者は互いの協力体制が大切

同じ職場に薬剤師と登録販売者がいる場合は、仕事を効率的に進められます。

薬剤師は一般医薬品の第2類と第3類の販売を登録販売者に任せて、調剤や服薬指導に集中できますね。

薬剤師と登録販売者の協力関係がうまく築けていると、質の高いサービスの提供が可能になります。

まとめ

薬剤師と登録販売者はどちらも医薬品を販売できますが、2つの資格には違いが多いです。

しかし、薬剤師も登録販売者も、医薬品を通して社会に役立つ点では同じ。

健康や医薬品に関心が強いけど今から薬剤師を目指すのが難しい人は、登録販売者にチャレンジするのも一つの方法でしょう。