
「目の前の患者さんが苦しんでいるのに、薬剤師の自分には何もできない」
と、薬剤師の立場にうんざりしてしまうことがありますよね。
薬剤師に医療行為は認められておらず、患者さんにしてあげられることは限られています。
しかし、医療行為に該当しない範囲で、患者さんのためにやってあげられることはあります。
それは、正直に言って些細なことですが、患者さんにとっては、大きな転機になりうることです。
この記事では薬剤師が患者さんに、やってもよいこと・いけないことを紹介します。
患者さんの力になれる場面が増えるかもしれません。
そもそも医療行為って何?

“まず、害をなすな”
有名なヒポクラテスの誓いの一節で、現在まで通じる医療倫理の基本となる考え方です。
医療とは、人の健康を回復・維持・増進することです。
そして、医療行為は医療を目的とする行為のことです。
医療行為は時に患者さんに負担をかけることもあるため法律によって規制されています。
手術では患者さんの体に刃を入れるわけですが、これは医療が目的でなければ暴力です。
ちょっと詳しめにいうと、手術の行為自体は暴行罪や傷害罪にあたるのですが、医師免許を持って医師が医療行為として行うことで、その行為に違法性がないと判断されるために犯罪にはならないのです。
こういう違法性をないと判断できる場合を法律用語で「違法性阻却事由」と言います。
違法性阻却事由としてもっともわかりやすいものが、例にも挙げたような医師免許をはじめとする医療の国家資格です。
免許証+いくつかの条件で、医療行為が認められます。
条件というのは、治療が目的であること、認められた方法であること、患者の承諾があること、などです。
ちなみに、正当防衛が罪にならないのも、違法性阻却事由とされているからです。
医療行為であれ、正当防衛であれ、違法性が阻却されるということは、罪に当たる行為をしているのに罪にしないということです。
そのため、違法性阻却事由に当たるための条件は厳しいものになっています。
医療行為が認められている職種

“医業の独占”という言葉を国家試験で勉強したことを覚えていらっしゃるでしょうか?
日本では、医師法第17条において、医療行為を業として行っても良いのは医師だけ、と定めています。
難しい言葉になりましたが、要するに、医療行為を仕事にしてお金を稼いでも良いのは、医師だけということです。
そして、医師による医療行為のお手伝いとして、看護師には医師の指示下での医療行為は認められています。
ほかには、救急現場における救急救命士には医療行為が認められています。
近年、議論されているのは介護士による医療行為です。
介護士による痰のお世話などが、医療行為にあたるのではないかと言われております。
くり返しますが、薬剤師には医療行為は一切認められていません。
「じゃあ、患者さんが苦しんでいるところに遭遇しても、何もしてはいけないのか?」
と言われると、そういうことではありません。
医療行為に該当しない範囲で、患者さんを助けてあげましょう。
医療行為に該当しないこと

フィジカルアセスメント
薬剤師にも身体所見を取ることはできます。
バイタルの確認
脈や呼吸を数えたり、血圧・酸素飽和度・体温を測ったりすることは、医療行為には該当しません。
患者さんを見て、
「何か変だな」
と感じたら、バイタルを確認しても良いのです。
もし、バイタルに異常を認めたら、すぐに医師に伝えて、バトンタッチしましょう。
病態の急変を早期発見できるかもしれません。
見える範囲の皮膚の確認
皮膚科の疾患や出血斑などの確認目的で、見える範囲の皮膚を観察することは、問題ありません。
特に、肝疾患による黄疸や、ショックによる顔面蒼白には気づいてあげないと大変なことになります。
聴診・触診・打診・心電図の解読
かなり、お医者さんっぽい行為ですが、実は認められています。
ただし、診断までつけてしまうと医療行為に該当します。
異常所見を見つけて、受診勧告を出すことは薬剤師にもできるのです。
喘息患者のwheeze音や、間質性肺炎の捻髪音など、国家試験で勉強したことがありますよね?
その知識を活かして、患者さんの不調を見つけましょう。
薬剤師向けに、フィジカルアセスメントの講習会を開催している学会があります。
勉強のとっつきとして、受講してみてはいかがでしょうか?
また、現在はYouTubeなどで、聴診の異常所見を気軽に聴くことができます。
今一度、勉強してみませんか?
医薬品使用の手伝い
患者さんの医薬品の使用を手伝うことも、医療行為には該当しません。
- 軟膏・クリームの患部への塗布
- 張り薬の患部への貼付
- 坐薬の挿入
- 点眼・点耳
これらのことを、代わりにやってあげるのは大丈夫です。
ただし、一点注意です。
インスリンなどの自己注射は患者さん自身の手でやらなければなりません。
さらに、例外の例外ですが、アナフィラキシーショックの患者さんに、エピペン®を打つことなどは認められています。
緊急の場合は、自分にできることはどんどんやりましょう。
調剤業務は医療行為?
ここまで読んで、
「じゃあ、薬剤師の調剤は医療行為には当てはまらないの?」
と考えたかと思います。
薬剤師による調剤業務は、医療”補助”行為に含まれるとされています。
医療補助行為とは、医師の指示下の看護師による医療行為の代行などを指す言葉です。
つまり、法律の上で、調剤業務は”医師による薬物治療の手伝い”とみなされているのですね。
残薬の管理もここに該当します。
薬剤師による医療行為の需要

新型コロナウイルスワクチンの注射を打つ人の候補として、薬剤師が挙げられたのは、記憶に新しいと思います。
「えっ、薬剤師は患者に触れることもほとんどないのに、いきなり注射を打つの?」
と、驚きました。
結局、薬剤師に医療行為は認められていないため、候補から外されましたけどね。
近年は、薬剤師による医療行為について、見直しが進められています。
医療の現場においては、医師や看護師の負担は本当に大きなもので、なんとか力になりたいと思いますよね。
また、目の前で苦しむ患者さんを見て、何もできないことを無念に思ったこともあるでしょう。
それに、医療の場で薬剤師にできることが増えれば、とても誇らしいことだと思います。
大学の薬学教育でも、静脈採血の練習などが取り入れられてきています。
加えて、薬剤師が聴診器を持つ時代が来る、とも言われてきています。
欧米諸国では、薬剤師が診察・診断・処方の権限を一部任され、日本もそれに習おうとしています。
ぜひ、日本の薬剤師であるあなたも、調剤以外の医療貢献に挑戦してください。
あなたが実績を挙げれば、薬剤師の医療における権限向上につながるかもしれません。
まとめ
日本では、薬剤師に医療行為は認められていません。
触診や傷口の縫合、身体診察などは医療行為に該当するため、薬剤師には許されません。
しかし、何もできないわけではありません。
- フィジカルアセスメント
- くすりの使用の手伝い
- 緊急事態における一部の医療行為
などは、薬剤師にもできます。
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