
「今の調剤薬局よりも良い勤務条件で働こう」と転職を考えていませんか?
ただ、近年では薬剤師が飽和状態といったウワサをよく耳にします。
なので、「今の時代は転職失敗のリスクの方が高いから転職活動はやめておこう」と思うのは無理もありません。
しかし、薬剤師不足が過去の話かどうかが分かれば将来についての考えや行動が変わってくるはずです。
そこで今回は、薬剤師の現在と将来の需要・供給について解説していきます。
現状の薬剤師の需要と供給は?

まずは、現在の薬剤師の需要と供給について確認していきましょう。
- 薬剤師数は充足傾向
- 有効求人倍率は減少傾向
- 薬剤師の不足は地方で加速
順番に解説していきます。
薬剤師数は充足傾向
まずは薬剤師数について確認していきましょう。
こちらの表は薬剤師の総数、薬局薬剤師数、病院薬剤師数をまとめたものになります。

参考:厚生労働省|医師・歯科医師・薬剤師統計(旧:医師・歯科医師・薬剤師調査):結果の概要
これを見ると、薬剤師数は年々増加しているのが分かります。
薬剤師数増加の背景には、私立大学の薬学部新設の増加が挙げられます。
人口10万人に対する薬剤師数も年々増加傾向にあるのが分かりますね。
こうした状況ですから、薬剤師不足と言われた時代と比べると充足傾向にあると言えるでしょう。
有効求人倍率は減少傾向
では、有効求人倍率もあわせて確認していきましょう。
下の表は過去5年間の有効求人倍率をまとめたものです。

有効求人倍率とは雇用動向を示す指標のひとつで、有効求人数を有効求職者数で割った値で算出されます。
この値が高いほど、労働者1人あたりの求人数は多くなるので売り手市場の状態といえます。
2022年11月時点の一般職業全体の有効求人倍率は1.34です。
このデータを比較すると、薬剤師業界はまだまだ売り手市場といえるでしょう。
ただし、5年間と比べると有効求人倍率は減少しています。
転職活動をするときは少し慎重になる必要があるかもしれません。
薬剤師の不足は地方で加速
では、薬剤師数の地域差について確認していきましょう。
薬局・医療施設に従事する人口10万人対する薬剤師数の全国平均は198.6人です。
全国平均を上回ったのは徳島県(238.6人)や東京都(234.9人)、兵庫県(233.9人)をはじめとした12府県でした。
そのほかの地域はすべて全国平均を下回っており、特に次の3県は全国平均を大きく下回っています。
- 沖縄県(148.3人)
- 福井県(157.0人)
- 青森県(161.2人)
薬剤師数は充足しつつあるものの、地域によっては依然として薬剤師不足が続いていると言えるでしょう。
薬剤師の将来性は?

現状の需要と供給について確認したところで薬剤師の将来性についても確認していきましょう。
- 日本全体では需要が供給を上回る
- 地方では薬剤師不足が継続
- AIやロボット技術などの発展
順番に解説していきます。
日本全体では需要が供給を上回る
厚生労働省が行ったある検討会で薬剤師の需給推計に関する調査結果が公表されました。
これによると、2045年に薬剤師は、少なく見積もっても2万4000人が過剰になる見通しと公表されました。
最大で12万6000人もの薬剤師が過剰になると推計されています。
20年以上先とは言え、遠い未来ではありませんから薬剤師としては無視できない推計結果ですよね。
20年後も必要とされる薬剤師でいられるよう今から準備が必要です。
地方では薬剤師不足が継続
厚生労働省の検討会で薬剤師が過剰になる推計結果が公表されました。
この検討会では、今後の薬剤師の需給バランスが地域間によって大きく異なるとも公表されています。
日本は超高齢社会へ突入し、若い人材の確保がどの地域でも課題になっています。
これが10年、20年と続いてしまうと薬剤師不足を起こしている地域ではさらに不足してしまうかもしれません。
薬剤師が不足している地域においては、引き続き薬剤師需要の高い状態が続くでしょう。
AIやロボット技術などの発展
薬剤師の需給バランスはAIやテクニシャン制度なども影響してくるでしょう。
AIはビッグデータ解析などの大量の情報を処理したり分析したりするのに長けています。
一部の画像診断や手術支援などにAI技術がすでに用いられています。
ロボットによる調剤ピッキングや分包などはすでに行われていますよね。
ですから、事務処理や薬歴管理などをAIが行う未来が来てもおかしくはありません。
現在以上に対人業務の充実を求められることが想定されるでしょう。
今後も必要とされる薬剤師とは?
これから先、薬剤師の飽和状態が予測されていますから、その未来に備えて行動しなければなりませんよね。
では、今後も必要とされるのはどのうような薬剤師でしょうか。
- 薬剤師不足の地域・在宅医療に携わる薬剤師
- 専門性を高めた薬剤師
順番に確認していきましょう。
薬剤師不足の地域・在宅医療に携わる薬剤師
薬剤師が不足している地域では、これからも薬剤師は必要とされるでしょう。
ただし、超高齢社会の日本においては在宅医療の必要性がより高まると想定されます。
調剤薬局内で服薬指導をするのではなく、往診同行などの訪問診療へ介入したほうがニーズに合っていますよね。
在宅医療に対して力を注いでいけば、今後も薬剤師として必要とされるでしょう。
専門性を高めた薬剤師
これまでのように、服薬指導などをする薬剤師では生き残るのは難しいかもしれません。
自己研鑽を続けながら何か得意分野を見つける必要があるでしょう。
かかりつけ薬剤師や認定薬剤師などの資格を身につけるのもひとつです。
病院薬剤師では抗菌化学療法認定薬剤師やNST専門療法士などのチーム医療で活かせる資格が多くあります。
勤め先の特色も含めた上で資格取得を目指していきましょう。
専門性を高めるおすすめの薬剤師資格3選
飽和状態になる前に薬剤師としての専門性を高めておきたいところですよね。
では、今後必要とされる薬剤師になるためにおすすめの資格を3つ紹介していきます。
- 研修認定薬剤師・日病薬病院薬学認定薬剤師
- 在宅療養支援認定薬剤師
- 漢方薬・生薬認定薬剤師
順番に確認していきましょう。
研修認定薬剤師・日病薬病院薬学認定薬剤師
薬局薬剤師は「研修認定薬剤師」を、病院薬剤師は「日病薬病院薬学認定薬剤師」をおすすめします。
これらの資格は自己研鑽を続け、一定以上の知識やスキルを持っていると認められた人に与えられる資格です。
参考:研修認定薬剤師制度とは
こうした資格を持っているのは他の薬剤師との差別化できる要素になりますし市場価値も高まります。
医療現場においても日々勉強を続けている薬剤師がいると思うと安心感や信頼感が違います。
資格取得要件も他の認定資格と比べて優しいのが特徴です。
「どの資格を目指せばいいかわからない」と悩むとき、初めの資格として目指すのをおすすめします。
在宅療養支援認定薬剤師
在宅医療に強みを見出すなら「在宅療養支援認定薬剤師」の資格がおすすめです。
この資格は、在宅医療における薬物療法の適切な知識、技能、態度を備えた薬剤師に対して与えられます。
参考:在宅療養支援認定薬剤師
超高齢社会において、在宅医療のニーズは高まるばかりです。
薬剤師とは言え、基本的なバイタルサインやフィジカルアセスメントも行えた方がよいですよね。
この資格を取得するためにこうした技能習得をするのが特徴です。
在宅医療現場で必要とされる薬剤師になるためにもおすすめの資格のひとつです。
漢方薬・生薬認定薬剤師
超高齢社会では漢方薬が処方される場面が増えると予想できるでしょう。
比較的副作用頻度が少なく高齢患者に対して比較的使いやすいのが漢方薬の特徴です。
「漢方薬・生薬認定薬剤師」は漢方薬に対する専門家の証しです。
漢方医学特有の「証」をもとにした評価が行える薬剤師がいれば医師の選択肢も広がりますよね。
往診に同行した際に医師に提案できるような薬剤師を目指して勉強してみませんか?
まとめ

薬剤師不足に関する解説は以上になります。
現状はまだ薬剤師不足と言えますが、20年後には薬剤師飽和状態に突入します。
とは言え、薬剤師不足の地域差は変わりませんし、在宅医療のニーズはより高まると予測されます。
こうした未来に備えて、在宅医療に携わったり専門性を高めたりする必要があるでしょう。
研修認定薬剤師や日病薬病院薬学認定薬剤師をはじめ、様々な認定資格を目指して勉強するのがおすすめです。
あなたの得意分野を見つけ出して薬剤師飽和状態も必要とされる人材になりましょう!