薬局で働いて数年も経つと、管理薬剤師を任されたり、異動や転職といった転機が訪れがちではないでしょうか。
その際には、幅広い知識や、対外的に認められている資格などを持っていれば、大きな心の支えになりますね。
そのひとつが“認定薬剤師の取得”ではないでしょうか。
薬剤師研修センターの研修認定薬剤師をオススメする3つの理由とメリットでは、
認定薬剤師の中でも、特に研修認定薬剤師について、ご紹介させていただきました。
ただ、実は研修認定薬剤師は山ほどいます。
そこで今回は、“薬局で取得可能なその他の認定薬剤師”にも焦点を当ててご紹介していこうと思います。
更なる知識の会得と他の薬剤師との差別化により、急な転機がいつ訪れてもいいよう、今から備えておきたいですね。
認定薬剤師の種類
認定薬剤師の定義は
『医療の最先端の知識を得るため、一定の研修などにより自己研鑽(じこけんさん)を続けた証』
として、国で定められた認定団体により認定されているものです。
ただ、一口に認定薬剤師といってもかなりの種類があります。
認定団体が10ヵ所ほどあり、実は認定薬剤師の種類は20以上も存在するのです。
主要な認定薬剤師を、薬局薬剤師の取得しやすさ、で分類してみました。
①薬局薬剤師におすすめ
- 漢方薬・生薬認定薬剤師
- 研修認定薬剤師
- 公認スポーツファーマシスト
- 認定実務実習指導薬剤師
②薬局薬剤師でも取得可能だが、労力&金銭的負担が大きい
- 在宅療養支援認定薬剤師
- プライマリ・ケア認定薬剤師
③薬局薬剤師でも取得可能だが、各学会の会員であることが必要(学会での発表実績が必須なものも)
- 外来がん治療認定薬剤師
- がん薬物療法認定薬剤師
- 腎臓病薬物療法認定薬剤師
- 精神科薬物療法認定薬剤師
- 糖尿病薬物療法認定薬剤師
- 日本医療薬学会認定薬剤師
④病院薬剤師会の会員のみ、もしくは病院での実務経験がないと取得不可
- HIV感染症薬物療法認定薬剤師
- 感染制御認定薬剤師
- 緩和薬物療法認定薬剤師
- 救急認定薬剤師
- 抗菌化学療法認定薬剤師
- 小児薬物療法認定薬剤師
- 日病薬認定指導薬剤師
- 日病薬病院薬学認定薬剤師
- 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師
これだけ認定があっても、④の病院薬剤師しか取得できない物が大半です。
そして、③の認定は各専門学会の会員であるのは前提、かつ学会での発表実績を、認定条件としているものがほとんどです。
非常に専門性の高い認定なので、持っていると相当強みにはなるでしょう。
ただ、残念ながらある程度の職場環境も必要になりますので、個人の努力だけでは難しい面もあります。
②の認定は、職場を選ばず、薬局薬剤師でも取得できますが、必要な単位や条件がかなり多いです。
そのためには足繁く研修会・学会に通わねばならず、時間面・費用面の負担がとても大きい認定です。
ですので、今回は①の、薬局薬剤師にオススメの認定薬剤師に絞ってご紹介させていただきます。
研修認定薬剤師

どんな資格?
まず最もメジャーと言っていい、研修認定薬剤師からご案内します。
薬剤師として活躍されているみなさんの中にはお持ちの方も多いと思います。
なにせ日本薬剤師研修センターによると、2021年6月現在、研修認定薬剤師を取得している薬剤師数は111,490名で、全体の35.8%にあたるそうです。
研修認定薬剤師の割合(日本薬剤師研修センター)
薬剤師総数の約3分の1が持っているというのは、かなりの保持率ではないでしょうか。
ただ、ここまで高い保持率になったのはここ5年ほどの出来事。
きっかけは2016年の診療報酬改定時から新たにできた“かかりつけ薬剤師”という制度でした。
5年経った今は徐々に浸透してきていますが、当時は大騒ぎでした。
その大きな要因が
『かかりつけ薬剤師になるためには認定薬剤師でないといけない』
ということ。
かかりつけ薬剤師になると加算が入るため、皆がすごい勢いで、研修認定薬剤師の取得を行なったのは記憶に新しいです。
薬剤師の3人に1人が持っているこの資格。
むしろ持っていないとかかりつけ薬剤師になることもできませんし、マイナス面が大きいです。
薬局勤務の薬剤師にとってはある意味必須の資格と言っても過言ではないでしょう。
取得方法
各種研修で40単位を取得し、研修センターへ申請するのみです。
研修自体も色々な種類の中から選択でき、必要単位の全てをe-ラーニングで取得しても構いません。
実務経験も問われないので、薬剤師免許を取ってすぐ取得可能です。
要するに、新入社員でも、最低60時間のe-ラーニングを自宅で行えば、取得できちゃいます。
研修認定薬剤師の取得割合が多い理由が、この取得難易度の低さと言えるでしょう。
研修の種類や取得方法などについて、詳しくは以前に書いたこちらの記事をご覧ください。
薬剤師研修センターの研修認定薬剤師をオススメする3つの理由とメリット
こんな人におすすめ
- 薬剤師になりたての人
- まだ研修認定薬剤師を取得していない人
研修認定薬剤師は現場で働いている薬剤師にとっては必須と言えます。
認定取得のための研修自体とても勉強になりますので、薬剤師になりたての人も積極的にチャレンジしましょう。
認定実務実習指導薬剤師

どんな資格?
薬学部の学生の実習を受け入れるために必要な資格です。
逆にこの資格を持っていないと実習生を受け入れることができません。
こちらも薬局薬剤師であれば、持っている人も多いのでは、と思います。
実習生の受け入れは『指導』が必要になり、時間も手間も取られる、と考えている人もいるかもしれません。
ただ、実習生を受け入れることによって、自分でも気づかなかった新たな発見や、知識の再確認があると思います。
やる気に満ちた実習生は、こちらにも良い刺激をくれ、薬局にとってプラスの面が大きいです。
それに金銭的な話になりますが、実習生を受け入れれば、実習費を受け取ることができます。
この認定を持ち、実習生を受け入れることで、1人あたり20〜30万円の収入が薬局に入ることになりますよ。
実習生の受け入れは不安もありますが、メリットも大きいため、受け入れる資格は持っておくにこしたことがないでしょう。
取得方法
- 5年以上の実務経験
- 2日間のワークショップへの参加
- 1日講習会への参加
その他にも自己申告ですが、「指導に情熱を持っているか」「常日頃から職能の向上に努めているか」など細かい条件が必要となりますので、こちらもご参照ください。
取得には、講習会&ワークショップで丸3日間費やすことになりますが、逆に3日間の研修で取得可能な認定でもあります。
薬学部でのカリキュラム上、長期の実務研修が必須になり、「認定実務実習指導薬剤師もある程度人数がいないと困る」というのが取得しやすさの要因でしょう。
現在25,446名(2021年6月)が取得しており、研修認定薬剤師の約4分の1の人数となっています。
研修認定薬剤師の人数より少ない理由として、「5年以上実務経験を積んでいない人が取得できていないから」というのが大きいと思われます。
そう考えると5年以上のキャリアがある薬剤師の中での取得割合は、結構高いのではないか、と思われますね。
こんな人におすすめ
- 5年以上の実務経験がある人
- 実習生の受け入れに強い抵抗がない人
「実習生の受け入れが決まったら」「会社から指示が出たら」
そこから取得するのではなく、こちらから積極的に受け入れの体制を整えておきましょう。
また、実習生の受け入れについて、不安は誰しもありますので、最初から指導に向いていないと諦めることは決して無いです。
ただ、やはり学生にとっては大事な実習ですので、嫌々引き受けるのは避けた方がいいと思います。
公認スポーツファーマシスト

どんな資格?
公認スポーツファーマシストは、最新のアンチ・ドーピング規則についての知識を持っている薬剤師です。
先日開催された東京オリンピックはもちろん、国内・世界問わず大きな大会はドーピング検査が行われます。
ドーピング意識がなくても、風邪薬や喘息の薬など、普段何気なく服用している薬が、実は禁止薬物である可能性もあります。
スポーツ選手にとって、スポーツファーマシストは必須の存在と言えるでしょう。
普段の業務で使用する機会は少ないかもしれませんが、スポーツファーマシストという資格を保持していることで、お声がかかる仕事もあります。
小中学校へのアンチ・ドーピング教育や、各競技団体の指導者への情報提供など、対アスリート以外にもスポーツファーマシストの仕事はたくさんあります。
取得方法
- 実務経験年数は問わない
- 基礎講習受講(東京・大阪で開催)
- 実務実習受講(オンライン)
- 試験に合格(オンライン)
東京もしくは大阪まで、基礎講習を受講しに行かないといけませんが、その1日以外はオンラインで受講・受験ができます。
特に都市部に住んでいる薬剤師であれば、比較的取得が容易なこともあって、現在10,211名が認定を受けています。
講習や試験の時期は毎年決まっていますので、興味のある方はこちらをご覧ください。
公認スポーツファーマシスト(公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構)
こんな人におすすめ
- スポーツに興味のある人
- 都市部に住んでいる人
スポーツに興味があれば、よりアスリートに寄り添い仕事ができるでしょう。
また、どうしても基礎講習で大阪・東京まで行かないといけないので、都市部の薬剤師の方が取得しやすいでしょう。
認知症認定薬剤師

どんな資格?
こちらは認定薬剤師の中では珍しく薬局薬剤師しか取れない認定です。
(薬局学会の会員であることが必須)
2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人となっており、6人に1人程度が認知症有病者というデータがあります。
認知症患者はどれくらい?(公益財団法人 生命保険文化センター)
認知症の患者さんのケアは難しく、家族や施設と相談しながら、個々に対応する必要があります。
高齢化社会に基づき、地域医療が求められる昨今、認知症認定薬剤師の需要は、間違いなく高くなっていくと思われます。
取得方法
- 3年以上の実務経験
- 認知症領域のe-ラーニングを20単位以上
- 2日間のワークショップ
- 認知症サポーターの取得
- 認知症の人への介入事例を3例以上提出
- 認定試験
- 研修認定薬剤師を取得済み
先ほどまでご紹介していた認定薬剤師よりは、少しハードルが高く感じられますね。
しかし、e-ラーニングに関しては研修認定薬剤師のものと同じサイトを利用することが可能です(メディカルナレッジに限る)。
それに認知症サポーターの取得も、自治体によりますが、1〜2時間の講習を受講すれば取得することができます。
そう考えると、実は取得のレベルがすごく高いわけでもありません。
その他の詳しい条件に関してはこちらをご参照ください。
こんな人におすすめ
- 研修認定薬剤師を取得している人
- 認知症患者に対するケアが必要な場面が多い人
特に高齢者が多い地域の薬局や、在宅訪問が多い薬局に勤めている人にとっては、取得しているとメリットが多いでしょう。
取得条件の一つである、介入事例も集めやすいと思います。
漢方薬・生薬認定薬剤師

どんな資格?
漢方薬・生薬に関する専門的知識を修得し、能力と適性を備えた薬剤師であることを認定する制度です。
漢方薬は複数の生薬を配合して成り立っています。
東洋医学から来るその世界は奥が深く、生薬の種類・量の僅かな違いを駆使して、患者さん一人一人の症状に合わせた漢方薬が出来上がります。
現在の日本の薬は西洋医学に基づくものが多いですが、漢方薬も根強く残っています。
漢方薬・生薬に詳しくなると、普段調剤している漢方薬の服薬指導に役立つのはもちろん、医師への処方提案など、自信を持って行えるようになります。
取得方法
- 9回の研修(オンラインでの受講も可能)
- 薬用植物園実習の受講&レポート提出
- 試問試験に合格
漢方薬・生薬に関する研修を受講する必要がありますが、こちらはオンラインでも受講可能なので、比較的取得しやすい単位ではないでしょうか。
ただ、研修の受講には約6万円必要であり、取得費用は少し高くなっています。
詳しい単位取得方法や試験のスケジュールはこちらをご参照ください。
現在の認定取得者は3,625人(2021年6月)です。
持っている人の数も少なく、アピールポイントになる資格ですね。
こんな人におすすめ
- 漢方薬に興味がある人
- 漢方の処方が多い薬局に勤めている人
- 漢方の処方については病院によってかなり違いがあると思います。
- ツムラの漢方を数種類しか出さないという病院から、生薬一つ一つを煎じるよう処方箋がくる病院もあります。
- ただ、漢方薬はどこの薬局に行ってもおおよそありますので、現在使用頻度が少なくても、役に立つ可能性の高い認定です。
まとめ
以上、認定薬剤師の説明と薬局薬剤師にオススメ資格をご紹介させていただきました。
研修認定薬剤師、認定実務実習指導薬剤師
- 現場での必要性が高い
- 取得していないと不利になる場面も
スポーツファーマシスト、認知症認定薬剤師、漢方薬・生薬認定薬剤師
- 活躍の場面が多少限定される
- 他の人と差別化ができる資格
これらの資格は、今現在職場で活躍するのはもちろんですが、転機が訪れた際、特に転職を考えた時には、かなり強い味方になるでしょう。
ぜひ未来の自分のためにも、積極的に薬剤師としてのステップアップを目指し、認定薬剤師を取得してみましょう。
激動する薬剤師の世界で悔いのない転職をするなら求人サイトを活用しよう
大きな薬価改定や「対物業務から対人業務へ」という方針の変化など、薬剤師の環境は大きな変化を強いられています。
その変化によって、適応できず勤務先が廃業してしまった、仕事が激務になったなどの話も聞いたりします。
かつては売り手市場と言われた薬剤師の転職も、その変化の影響を受けないわけがありません。
そんな中で、後悔のない転職活動をするためには、自分が企業にとってどう映るのかという客観的な視点や、企業の表には出てきにくい情報などもしっかり吟味したうえで慎重に転職活動をすすめていく必要があるでしょう。
それらの大きな助けとなってくれるのが薬剤師専門の求人サイトです。
ここでは4つお伝えするので、転職を考えるなら、ぜひ登録してみてください。
登録・利用はいずれも無料です。
マイナビ薬剤師 |
---|
![]() 「薬剤師転職エージェントご利用者満足度No.1」と評価されたマイナビ薬剤師。その理由は、「会う」ことで、あなたが仕事に対して何を求めているか、その希望を実現するため手伝うできることは何かを明確にできると考えていること。 そのため、日本全国に拠点を置き、転職希望者とは基本的に対面での面談を実施しています。 さらに、人それぞれの転職理由を丁寧な対応の中で「本当の気持ち」を汲み取り、一人あたり平均紹介求人数19.5件と、豊富な選択肢を提示してくれます。 はじめての転職なら、丁寧なフォローで不安を解消しつつ転職活動をすすめられるので、登録をおすすめします。 登録・利用は無料です。
|
薬キャリエージェント |
---|
![]() コンサルタント満足度95%を誇り、医療業界に特化してきた専門性の高さと希望に合った求人を最短即日で最大10件紹介してくれるといった迅速な対応が特徴です。 求人情報の裏側も徹底調査し、表には出てこない「なぜ年収が高いのか?」「有給はきちんと取得できているか?」など、きちんと納得した上で仕事を探すことができます。 また、正社員やパートのみならず、派遣にも力を入れており、融通の利きやすい働き方をすることもできますし、派遣といえども福利厚生も充実しています。 全国多数の非公開・好条件求人を保有していますし、登録・利用は無料でできるので、転職を考えたなら、いろんな可能性を見るためにまずは登録しておきたいサイトです。
|
ファルマスタッフ |
---|
「お会いする姿勢」を大切に、できる限り直接1人1人と直接顔を合わせて話を聞き、サポートしてくれるファルマスタッフ。 その姿勢は、求人紹介先にも向けられているようで、高い満足度により信頼関係を築いています。 おかげで、薬剤師の転職成功率はなんと90%超の実績。 転職活動を丁寧にサポートしてくれるだけでなく、グループ企業である大手薬局チェーン・日本調剤株式会社の教育ノウハウを活かし、スキルアップ・キャリアアップの機会が得られるのも大きな特徴。 転職の機会にステップアップしていきたいと考えるならぜひ登録したいサイトです。 もちろん、登録・利用は無料です。
|
リクナビ薬剤師 |
---|
![]() リクナビ薬剤師は、年間100万人以上の転職を支援するリクルートグループが運営する薬剤師専門サービスです。 リクルートならではのネットワークは強いようで、非公開求人にはリクルートグループでしか見つからない求人も多数あります。 ほかのサイトに比べて大手企業の求人数が多いともいわれています。これまで培った人材紹介サービスとしてのノウハウがあるからこその、最短3日で転職が実現するスピーディーさも魅力です。 転職活動になかなか時間が割けなくても、「薬剤師は忙しい」ことを前提に、面談の日程調整や合否連絡、退職手続きの方法など、転職の際に発生する連絡業務、事務手続きなどをしっかりとサポートしてくれます。大手企業に転職したい、良い条件のところに転職したいなら登録しておきたいですね。 登録・利用は無料です。
|