
薬剤師はことあるごとに医師と比較されます。
きっと、医師は医療のリーダーで、薬剤師はくすりの専門家、という漠然としたイメージはお持ちでしょう。
しかし、仕事の内容、収入、立場など、詳しい違いはご存じですか?
「薬剤師になりたいけど、医師との詳しい違いがわからない」
というあなたに向けて、薬剤師視点で見た、両者の違いを解説します。
進路選択のヒントにしてください。
医師、薬剤師になるまでの違い
大学入試

医師も薬剤師も、それぞれ医学科・薬学科に大学に6年間通う必要があります。
このため、医師・薬剤師になるためには、医学科・薬学科入試に合格しなければなりません。
医学部入試は大学受験の最難関の1つです。
「医大生です」
と名乗られたら、
「日本一賢い学生さんの仲間なのか」
と感心していまいます。
一方、薬学部の入試難易度は様々です。
上位の大学なら医学部レベルの成績が必要になりますが、ボーダーフリーの大学もあります。
入試時点で考慮しておく最大のポイントは、
「私は研究者薬剤師になりたいんだ!」
と考えている人は、受験偏差値上位の大学に入っておいた方が良い、ということです。
また、上位の薬学部は、医学部受験生が滑り止めとして受験することがあります。
上位の薬学部を目指すなら、医学部受験者に引けを取らないように、勉強しておきましょう。
学生生活

低学年のうちは、大きな差はありません。
医学生と薬学生で、同じ科目を履修することもあります。
友達になることもあるでしょう。
しかし、高学年になってくると違いが目立ち始めます。
医学科は人を対象とした学問中心になるのに対して、薬学科は薬物について化学・物理・生命科学の観点から学びます。
医学生からは、
「薬学部の人はいつも難しいことやってるなぁ」
と見えるようです。
一方、薬学生は
「医学部の学生は、医療についてものすごい量の知識を身に付けているんだな」
と感じます。
また、医学科、薬学科ともに臨床実習や研究室配属がありますが、ここも力の入れどころが違います。
医学科は高学年をほぼ臨床実習で過ごしますが、研究室はわずか1か月です。
一方、薬学科は計6か月程度の臨床実習で、それ以外を研究にあてます(一部の私立大学はこの限りではない)。
薬剤師の医療人としての在り方や対人業務の重要性が、見直されてきていますが、医師と比べると医療の教育は弱いようですね。
「医療人として薬剤師を目指してきたけど想像と違う!」
とならないよう、よく考えて下さい。
研修医
医師は卒業後も研修医として勉強します。
2年間の初期研修と3-5年間の後期研修を経て初めて一人前になるのです。
現在、薬剤師に研修医のような研修制度はなく、制度の上ではベテラン薬剤師と新米薬剤師は対等です。
近年、薬剤師にも、研修医のような研修制度を導入することが検討されています。
薬剤師も一人前になるのに、卒後の勉強が必要になるときが来るかもしれません。
仕事の内容

たまに、医師になりたかったけど、断念して薬剤師になった人がいます。
しかし、医師がそのことを聞くと、
「なんで薬剤師なんだろう?仕事の内容は全然違うのに」
と疑問に思うそうです。
“医療に貢献したいという気持ち”は、共通するものですが、業務の内容はまったく違います。
薬剤師は調剤や疑義照会を通して、薬物治療をサポートするのが仕事です。
一方、医師の仕事は、患者さんを診察して治療することです。
薬物治療では、医師は患者さんの病態から薬剤の種類や用量などを決めて、処方箋を書きます。
かなり差がありますよね。
治療における責任の大きさも、医師の方が当然上です。
もちろん、薬剤師の職務は、薬物治療の実践において重要ですし、責任も重大です。
医薬分業
薬剤師の起源は”医師がくすりに毒を盛っていないか確認する仕事”と言われています。
これが”医師による薬物治療をサポートする”、という現在の薬剤師の仕事になりました。
薬剤師には、医師の薬物治療を客観的に評価することが求められます。
だから、医師と薬剤師は別の組織に所属している方が良い、と考えられています。
これが医薬分業です。
病院と薬局が別々に経営されているのはこのためです。
医師による薬物治療を別組織の薬剤師が評価して、初めて薬物治療が実践されます。
もしも、薬物治療に不備があれば、医師に異議を唱えます。
異議を唱える手続きを“疑義照会”と言います。
疑義照会は薬剤師の最も重要な仕事です。
これが無いと、患者さんは、効かないくすりを使ったり、副作用に苦しむリスクが上がったりします。
「先生、その処方ちょっとまった!」
と言えるのは薬剤師だけなのです。
勤務時間

労働基準法によって、勤務時間は週40時間までと決められています。
しかし、病気はそんなことを考慮してはくれないので、医療人は残業することも多々あります。
医師の勤務時間の平均は週あたり約47時間と言われております。
薬剤師はほぼ40時間です。
やはり医師の方が、大変なお仕事のようですね。
収入

薬剤師は世間的に高給取りなイメージがあるようですね。
医師はそれ以上のイメージです。
では、実際にどれくらい稼ぐのでしょうか?
薬剤師の平均収入は年間500万円ほどです。
医師はなんと1500万円です。
また、薬剤師の収入は定年までほとんど増えませんが、医師の収入は増えます。
医師も薬剤師も就職に困ることはほとんどないので、どちらも安定した仕事と言えるでしょう。
薬剤師の収入500万円というのは、若手社会人としてはかなり高水準です。
しかし、定年が近くなると大卒の平均収入は600万円近くなるので、少しこころもとないですね。
薬剤師を目指すなら、薬剤師になった後の進路も考えておくと良いかもしれません。
専門性の違い

医師は研修医期間などを通して、自分の専門の診療科を持ちます。
医師は特定の診療科についてのスペシャリストなのです。
ただし、総合診療という診療科があり、患者を幅広く診る医師もいます。
総合診療医は頻度が高い病気を幅広く診るのが仕事で、僻地の医療に重宝されます。
一方、薬剤師は広く医薬品の知識をもつジェネラリストです。
診療科別の病棟業務を受け持つことはありますが、特定の診療科しかできない、ということは許されません。
ただし、専門薬剤師資格などを通して、自分の得意分野を持つこともできます。
権限
医業の独占

日本で医療行為を仕事にしても良いのは医師だけなのです。
薬剤師に医療行為は認められておらず、調剤も法律の上では”医療行為の手伝い”とみなされています。
「薬剤師は医療人だから、患者のために何でもするぞ!」
と考えていても、実際にできることは”医療行為の手伝い”までなのです。
ここに、医療人としての限界を感じてしまう薬剤師も少なくありません。
薬剤師として医療の現場に立ちたいなら、割り切って考えられるようになっておきましょう。
もちろん、緊急時はこの限りではありません。
調剤業務

「調剤業務こそは薬剤師の専売特許だ!」
残念ながら、そうではありません。
医師は条件付きで自ら調剤することができます。
また、医療用の覚せい剤の調剤は医師でなければできません。
この点で、調剤の権限も実は医師の方が強いと言えます。
ただし、調剤の経験がある医師は極めて少数派です。
調剤は基本的に薬剤師の仕事です。
公務員
医系技官
官僚、霞が関のお役人さんです。
理系出身の官僚は技官と呼ばれます。
そして、医師免許か歯科医師免許を持つ官僚は、”医系技官”と呼ばれ、医療行政の仕事をすることができます。
しかし、薬剤師は医系技官になることができません。
薬剤師の技官は、薬事衛生に関わる行政業務に携われますが、医療行政とは部署が異なるようです。
麻薬取締官
俗に「マトリ」と呼ばれる特殊な警察官です。
麻薬関連の犯罪を取り締まります。
マトリになれるのは、薬学・法学の出身者に限られます。
しかし、法学出身のマトリはほとんどおらず、薬剤師がほとんどとの噂です。
麻薬取締官になりたければ、薬剤師免許を取っておくと良いかもしれませんね。
薬局・医療機関の開設・管理

ここまで、医師の権限の強さに、薬剤師が霞んでしまうような話ばかりでした。
ここでは、対等に差別化できます。
薬剤師は薬局の開設者や管理者になることができます。
また、薬品の工場などの管理者として薬剤師を配置する必要があります。
薬局や薬品工場の開設・管理をしたいなら薬剤師になりましょう。
一方、医療機関の開設は研修を終えた医師でなければなりません。
医療現場での地位
“医師はリーダー、薬剤師はNo.2”というイメージが世間にはありますよね。
しかし、残念ながら、現場での薬剤師はNo.2と呼べるほどではないように感じます。
医師とコメディカル(医師以外の医療人)で区分されている印象で、薬剤師が特別視されることはほとんどありません。
また、薬剤師のことを”先生”と呼んでくださる方もいますが、少数派です。
立場が欲しくて薬剤師になるのはオススメしません。
まとめ
基本的に医師が医療のリーダー、薬剤師はサポートです。
今後、薬剤師の権限が増えることはあっても、医師のリーダー的立場は変わらないでしょう。
その分、医師は研修や責任、仕事などでの苦労も多いです。
そして、薬剤師も決して責任が軽いわけではありません。
あなたが悔いのない進路を選択できることを祈っています。
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