
薬剤師免許を持っていれば、どの職場でも薬剤師の業務が行えると思われがちです。
ですが、調剤薬局未経験で薬局への転職が決まった場合、薬局側より保険薬剤師の登録が必要だと言われるのではないでしょうか。
もし保険薬剤師の登録をせずに調剤や投薬を行ってしまうと、医療保険上の規約違反となる可能性があります。
調剤薬局で働いてトラブルになる前に、しっかりと確認していきましょう。
保険薬剤師とは?

そもそも保険薬剤師は、どのような薬剤師なのでしょうか。
保険薬剤師は、処方せんの受付をしている薬局で働くのに必要な肩書きです。
調剤薬局では患者さんが持ってきた処方せんを元に薬を調剤します。
その上で患者さんに対し適切な服薬指導を行い、薬をお渡しします。
そこでかかった費用は、基本的には3割が患者さんの自己負担、7割は健康保険からの補助になります。
この医療保険制度のおかげで、患者さん自身は安い金額で医療を受けられます。
しかし、7割分を公的費用である医療保険から出している以上、調剤薬局は保険上のルールに則ってお金を請求しなくてはなりません。
この医療保険制度の中で、処方箋に基づく調剤や患者さんへの投薬が許されているのが保険薬剤師なのです。
調剤薬局以外の薬剤師は保険薬剤師でなくてもいいの?

薬剤師は調剤薬局以外にも、ドラッグストアや病院で働いています。
しかし、そのような職場にいる薬剤師は保険薬剤師の資格は基本的に必要ありません。
ドラッグストアでは主にOTC医薬品を取り扱います。
OTC医薬品は医師の処方せんは必要なく購入できますが、医療保険の利用も認められていません。
医療保険の範囲外でのやりとりになりますので、薬剤師も保険薬剤師である必要はないのです。
また病院で働く薬剤師は、調剤薬局と同様、保険医薬品を取り扱います。
しかし、病院での調剤は「病院内で保険医の指示のもと、薬を準備する」と解釈されます。
病院では医師が保険医療の中心に立ち、その都度変化する患者さんの容態に合わせ指示をしていきます。
薬剤師はその保険医の指示を受けて、その都度調剤などを行いますので、保険薬剤師の資格はなくても許されます。
一方、調剤薬局は、医師の診察後に処方せんを持ってきた患者さんの請求を元に調剤などを行います。
調剤薬局では薬剤師が保険医療の中心となり、調剤や投薬以外にも保険点数の計算や請求まで担いますので、保険薬剤師の資格が求められるのです。
保険薬剤師になるのは難しい?

ここまで聞くと、保険薬剤師の登録は難しいのかと思われるかもしれません。
ですが保険薬剤師の登録は、薬剤師免許を持っていれば、申請書など指定の書類を提出するだけで完了します。
実際は医療保険などの内容をしっかり把握するべきではありますが、登録自体は難しくないのです。
実際に保険薬剤師の登録をするには?

それでは、保険薬剤師の登録をする方法を具体的に見ていきましょう。
ちなみに、保険薬剤師の登録は調剤薬局側が代わりに行ってくれる場合があります。
勤務形態がパートだとしても、代行してくれる可能性がありますので、聞いてみると良いかもしれません。
自分で行う場合、登録の申請方法は「厚生局事務所の窓口に実際に行く方法」と「郵便で申請書を送る方法」があります。
厚生局の事務所は都道府県ごとに1箇所しかなく、行くだけでも時間がかかってしまいます。
そこで今回は、「郵便で申請書を送る方法」を見ていきましょう。
1、申請する厚生局を確認する
保険薬剤師の登録は、勤務先が管轄内にあたる厚生局の事務所に申請します。
薬剤師免許の申請場所であった、保健所ではありませんので注意しましょう。
ご自身の職場が、どこの厚生局になるかは以下の画像でご確認ください。
厚生局が分かりましたら、それぞれのホームページより申請書をダウンロードします。
- 北海道厚生局:保険医・保険薬剤師の登録等に関する申請・届出
- 東北厚生局:保険医・保険薬剤師の登録等に関する申請・届出
- 関東信越厚生局:保険医・保険薬剤師の登録等に関する申請・届出
- 東海北陸厚生局:保険医・保険薬剤師の登録等に関する申請・届出
- 近畿厚生局:保険医・保険薬剤師の登録等に関する申請・届出
- 中国四国厚生局:保険医・保険薬剤師の登録等に関する申請・届出
- 四国厚生局:保険医・保険薬剤師の登録等に関する申請・届出
- 九州厚生局:保険医・保険薬剤師の登録等に関する申請・届出
厚生局によっては、申請書と別に添付文書が指定されていますので、一緒に確認しましょう。
2、申請書に必要事項を記載
実際に申請書の記載例を参考に書いていきましょう。

上の記載例は、関東信越厚生局の申請書になります。
申請書は厚生局ごとに、やや違いがありますのでご注意ください。
よく「医師・歯科医師・薬剤師」の「薬剤師」に○で囲う事を忘れがちですので気を付けましょう。
Point 1:医療機関コードとは

医療機関コードは、それぞれの保険薬局ごとに指定されている7ケタの番号です。
実際に薬局で聞くか、以下のサイトよりご確認ください。
Point 2:健康保険法第71条の登録欠格事由とは

申請書を記載していると、「健康保険法第71条第2項第1号から第3号のいずれか(登録欠格事由)に該当」の項目が出てきます。
その健康保険法の該当箇所は以下の通りです。
第七十一条 第六十四条の登録は、医師若しくは歯科医師又は薬剤師の申請により行う。
2 厚生労働大臣は、前項の申請があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、第六十四条の登録をしないことができる。
一 申請者が、この法律の規定により保険医又は保険薬剤師に係る第六十四条の登録を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者であるとき。
二 申請者が、この法律その他国民の保健医療に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。
三 申請者が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。
第六十四条 保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師若しくは歯科医師又は保険薬局において健康保険の調剤に従事する薬剤師は、厚生労働大臣の登録を受けた医師若しくは歯科医師(以下「保険医」と総称する。)又は薬剤師(以下「保険薬剤師」という。)でなければならない。
つまり、過去に保険薬剤師として不正請求などをしたがために保険薬剤師を取り消されたことがある人、そのために刑罰を受けたことがある人などが該当します。
今回、保険薬剤師の申請が初めての場合は関係ないかと思いますので、「無」を○で囲えば問題ないでしょう。
3、必要書類を郵送

必要書類の記載が終わりましたら、早速郵送しましょう。
郵送先は、勤務先がある県内の厚生局事務所か、厚生局指導監督課になります。
送る書類は、以下の通りです。
- 記入した保険薬剤師登録申請書
- 薬剤師免許証の写し
- 各厚生局より指定があれば、指定の添付文書
郵送後に書類不備などがあると、保険薬剤師の登録が遅れてしまいますので、間違いがないか確認をしましょう。
分からない事があれば、各厚生局事務所に問い合わせるのが確実です。
申請後はいつから働けるのか?

申請書の郵送ができたら、あとは保険薬剤師登録証が送られてくるのを待つだけです。
登録証が届けば、保険薬剤師として登録されたことが確認できます。
登録証は職場に送られてくることが多く、早いと1週間、遅いと3週間ほどかかるようです。
職場にもよりますが、保険薬剤師の登録がされていないうちは薬剤師手当がもらえない可能性もあります。
4月や5月など、新人薬剤師が働き始めるタイミングは特に時間がかかってしまうようです。
もし、1日でも早く保険薬剤師の登録を済ませたいのであれば、申請書を速達で送るなどしてみても良いのかもしれません。
保険薬剤師登録後に変更が必要なタイミングは?

無事に登録が済むと、晴れて保険薬剤師として働くことができます。
それでは今後、保険薬剤師関連で変更が必要なタイミングはあるのでしょうか。
保険薬剤師は比較的簡単に登録できてしまうので、変更が必要なときに忘れてしまいがちです。
変更のタイミングをあらかじめ知っておいて、忘れずにできるようにしておきましょう。
勤務先の保険薬局が地方厚生局の管轄外になった場合
勤務先が変更になった場合、以前は県外の保険薬局に転職した場合に届け出が必要になっていました。
ですが令和3年の2月より制度が変わり、勤務先が登録されている厚生局の管轄外に変わる場合にのみ変更届が必要となりました。
具体的には以下のようになります。
- 東京都の調剤薬局から、神奈川県の調剤薬局に転職した場合→どちらも関東信越厚生局の管轄内なので変更届は不要
- 東京都の調剤薬局から、大阪府の調剤薬局に転職した場合→関東信越厚生局から近畿厚生局に管轄がかわるので変更届の提出が必要
今後職場が変更となることがあれば、管轄の厚生局が変わらないか確認をしましょう。
氏名が変更になった場合

結婚などで名字が変われば、薬剤師免許と同じように保険薬剤師の登録の変更も必要になります。
薬剤師免許の名前変更とは別で、届け出が必要になりますので忘れずにしましょう。
変更届は、各厚生局の保険薬剤師登録申請書のダウンロードページと同じところに載っていますので、確認してみてください。
まとめ

以上、保険薬剤師の登録についてお伝えしました。
登録自体は申請書を出すだけで済みますが、実際に働くには保険に関する様々な知識が必要となります。
保険薬剤師の登録だけで満足せず、医療保険への理解も深めていきたいところですね。
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