薬剤師になるには

薬剤師国家試験の合格率を素直に信じてはいけない理由と真の合格率

薬学部の志望大学を選ぶときには、国家試験合格率が気になりますよね。

「国家試験合格率97%!」の宣伝を見て、合格率が高い大学は、優秀で入学後もスムーズに資格が取れる印象を持つでしょう。

しかし、この国家試験合格率には様々なカラクリがあることをご存知ですか?

純粋に合格率だけで判断し大学を選ぶと、入学後に裏事情を知って失望しかねません。

良く見えるパーセンテージの裏にどんな事情が隠されているのか、お伝えしていきます。

全体の薬剤師国家試験合格率から読み取れることとは

大学別の合格率を見る前に、全体の合格率はどう推移しているのかを見ていきましょう。

引用元:薬剤師国家試験対策はマンツーマン授業のファーマックスにお任せください

これを見ると、ここ5〜6年は新卒ですと85%前後、既卒ですと45%前後と大きく変動はありません。

ここで注目すべきは、新卒合格率と既卒合格率に大きな差がある事です。

新卒は「大学6年生のタイミングでの受験」、既卒は「前回不合格となった人の再チャレンジ受験」や「大学6年の冬では卒業延期となり、半年後の夏に卒業となった人の受験」などを指します。

純粋にこのデータから読み取れる事は、毎年例外なく新卒の方が圧倒的に受かりやすいということです。

新卒よりも既卒の合格率が低いのはなぜか

データから、既卒よりも新卒が受かりやすいことは読み取れましたが、実際はどうなのでしょうか。

私自身、身近な友人達を見て思いましたが、新卒の方が合格しやすいというのは間違いないと思います。

様々な要因のうちの一つは、新卒受験者となる大学6年生の1年間で何度もテストを行うことです。

その度に、自分の成績を見直し、わからないところは自然と友達同士で教え合います。

また、大学の先生も新卒合格率を上げるのに熱心ですので、何度も面談するなどサポートが充実します。

6年生として大学に所属していれば、環境が充実するのです。

一方、既卒の場合、国家試験対策予備校に通う場合は予備校がサポートしてくれます。

しかし、既卒者の中には、自宅で1人で勉強したり、薬剤師資格を持たないで働きながら勉強したりと環境が整わない人が多いです。

そして、国家試験までモチベーションが保てず、再び不合格となる可能性が高くなってしまいます。

データ、そして実体験からも新卒が受かりやすいのは事実であると言えます。

大学は「大学別新卒合格率」を上げるのに必死?

「既卒より新卒の方が受かりやすい」ということは断言できます。

そして、これから入学する大学を選ぶ際、「最短ルートで薬剤師資格を得たい」と思うのは当たり前ですよね。

そこで、それぞれの大学を簡単に比較するのに使われる指標「大学別の新卒合格率」です。

大学別の新卒合格率は毎年、厚生労働省が統計をとります。

以下のサイトの「過去の薬剤師国家試験の結果」に詳細が載っています。

薬剤師国家試験のページ|厚生労働省

大学を選ぶ高校生側の立場だと、「新卒合格率が高い=面倒見のいい大学で、学生も優秀だ」と感じるでしょう。

なるべく、新卒合格率が高い大学に入りたいと思うのは自然なことです。

逆に大学側は「新卒合格率が高ければ、高校生が魅力を感じて入学を希望してくれる」と思っています。

つまり、新卒合格率が高いに越したことはないのです。

しかし、この考え方があるが故に、大学側は「なんとしても新卒合格率を上げる!」と様々なカラクリを作り上げてしまっています。

そのカラクリは以下の通りです。

・国家試験を受ける前に卒業試験で学力を確認している

・新卒合格率からは在学中の留年率は読み取れない

それでは一つずつ見ていきましょう。

国家試験を受ける前に卒業試験で学力を確認している

新卒合格率の“新卒”の定義は、「大学6年生のタイミングで受験した人」です。

大学側は、この新卒合格率を上げるために、「より合格する確率の高い学生だけを受験させたい」と考えます。

その、“より合格する確率の高い学生”を確認する方法が、国家試験の前に行う「大学卒業試験」です。

卒業試験は国家試験の1ヶ月ほど前である1月に行う大学が多いです。

内容はそれぞれの大学で作られるオリジナルの試験になります。

この卒業試験で国家試験合格の可能性が低いと大学が判断すると、卒業延期となってしまいます。

そして、その年の国家試験は受験できなくなります

卒業延期の判断は大学により考え方が違う印象です。

「卒業試験の段階の学力では国家試験合格は難しい。だが、まだ1ヶ月あるからそこで伸びてくれるだろう!」と考える大学もあります。

しかし、「残りの期間で学力が伸びて国家試験に合格する可能性はある。しかし100%ではない。今回は卒業延期してもらおう。」と考える大学も少なからずあります。

つまり、この卒業試験のハードルを上げることで国家試験の新卒受験者を絞り、見かけの合格率を上げることができるのです。

大学の卒業試験に合格できない人はどれぐらいいるのか

それぞれの大学で卒業試験に合格出来なかった人がどれぐらいいるのかは、先ほどと同じ厚生労働省の資料で予想することができます。

過去の薬剤師国家試験の結果 第107回(令和4年2月19日、20日実施)|厚生労働省

薬剤師国家試験のページ|厚生労働省

「過去の薬剤師国家試験の結果」の「大学別合格者数」を見てみると、新卒の欄の「出願者数」よりも「受験者数」が少なくなっている大学があります。

国家試験の出願は例年1月の上旬にします。

しかし、その後の大学の卒業試験で卒業延期となると、国家試験の受験が認められません。

つまり、「出願者数」と「受験者数」の差は、「卒業延期となってしまった人数」であることが想定されます

国家試験まで1ヶ月あるにしても、大学から認められず、国家試験に挑戦すらさせてくれない人達がいるということです。

合格率が良かったとしても、受験者数を絞った上での合格率だと思うと少し見方が変わってきますよね。

新卒合格率からは在学中の留年率は読み取れない

大学の卒業試験から、国家試験合格まで辿り着く人数は上記の資料より読み取れました。

しかし、大学は6年生になる前から学生の学力を試し続けています

大学にもよりますが、上の学年に進級するための試験は毎年ハードルが高く、特に大学3年生の試験は科目数が多く難しいものばかりです。

国家試験の出願にたどり着く前に、何度もふるいにかけています。

留年率の高い大学の場合、新卒合格率が良かったとしても、6年でストレートに資格を取れているとは限らないのです。

どれぐらいの学生が、留年せず、ストレートで国家試験に合格しているのか、文部科学省が出している別の資料で読み取ることができます。

薬学部における就学状況等 2021年(令和3年)度調査結果:文部科学省

薬学部における修学状況等:文部科学省

この「薬学部における修学状況等」の資料を見ると様々なことが分かります。

留年せず、5年生に進級できた人数の割合を示す「5年次進級率」や、そのまま留年や卒業延期をせずに卒業できた割合を示す「卒業率」を見ることができます。

また一番右端の「国家試験合格状況」の項目を見ると、前の資料でも紹介した新卒の「合格率」が載せられています。

そんな中でも、この資料で注目すべき値が、「6年制学科の修学状況」内にある「合格率」です。

ここに記載のある「合格率」は、入学してから6年生になるまでの間に留年や卒業延期をせず、ストレートで国家試験に合格できた人の割合、言い換えると「ストレート合格率」を示します。

「国家試験合格状況」の「合格率」と比べてみてください。

ほとんど変わらない大学もありますが、「ストレート合格率」が「新卒合格率」より30%〜50%も低い大学があることが見て取れます。

大学によっては、卒業試験以前に、1〜4年生の段階で学生の学力を見極め、留年させる所もあるのです。

留年するということは、良く言えば、大学でより長く勉強の面倒を見てもらえるということです。

決して悪いことではないのかもしれません。

しかし、大学のホームページやパンフレットに載っている合格率がいいからと言って、入学すればスムーズに薬剤師資格を取れるとは決して思ってはいけないのです。

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まとめ

以上、国家試験合格率のカラクリについてお伝えしました。

まとめると以下の通りです

・国家試験は既卒者よりも新卒者の方が合格しやすい

「国家試験新卒合格率」を良く見せるために、卒業延期させる大学がある

「薬学部における修学状況等」の資料に載っている「合格率」が入学から留年せず資格を取れた人の割合を示す「ストレート合格率」、つまり“真の合格率”と言える

もちろん、大学は国家試験の合格率や留年率が全てではありません。

立地や学生の雰囲気、教授にどんな人がいるか、学費はどれくらいかなど様々な要因が絡み合います。

しかし、薬学部の学生生活は毎日が勉強でなかなか苦しいものです。

できる限り時間をかけず卒業し、1日でも早く薬剤師資格を取れた方が精神的に楽でしょう。

これから薬学部の大学選びをする方には、ぜひ「薬学部における修学状況等」の資料に一度は目を通すことをおすすめします。

資料を見ることで、入学前と入学後のギャップが少しでも減ることを切に願います。

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